車両系建設機械を用いて行う荷のつり上げの作業時等における安全の確保について

                                                     基発第542号
                                                   平成4年10月1日


今般、労働安全衛生規則第164条が改正され、車両系建設機械による荷のつり上げの作業については、
作業の性質上やむを得ないとき等に限って行うことができることとされ、かつ、当該作業を行う場合には
同条第3項の措置を講じなければならないこととされたところであるが、同規定の運用に当たっては、下
記の事項に留意の上当該作業の安全確保を図られたい。 なお、本通達をもって、昭和57年3月24日付
け基発第202号「掘削用の車両系建設機械を用いて行う土止め支保工の組立て等の作業に関する労働
安全衛生規則第164条ただし書の適用について」は、これを廃止する。

                                 記

第1 荷のつり上げの作業を行う場合の措置

車両系建設機械による荷のつり上げの作業を行う場合には、労働安全衛生規則第164条第3項の措置
のほか、以下の措置を講ずるよう指導すること。
1 フック等の金具の取り付け
 (1) フック等の金具の形状フック等の金具は、バケット等が傾き、また、ブーム等の起伏が行われても、
  玉掛け用ワイヤ ロープ等が外れにくい環状又はこれに近い形状のものを使用すること。
 (2) フック等の金具の取り付け フック等の金具は、バケットのアームとの取付け部付近等掘削の作業時
  に著しい損傷を受ける おそれのない位置であって、バケット等が著しい偏荷重を受けない位置に取り付
  けること。 なお、溶接により取り付ける場合には、JIS Z3801「溶接技術検定における試験方法及び判
  定基準」若しくはJIS Z3841「半自動溶接技術検定における試験方法及び判定基準」に基づく溶 接技術
  の認定を受けている者又はボイラー溶接士が行うこと。ただし、JIS Z3040「溶接施工方 法の確認試験
  方法」等により確認された溶接施工方法によって溶接を行う場合は、この限りでない。
2 つり上げる荷の最大荷重
 つり荷の重量とつり具の重量の合計が、車両系建設機械の標準荷重(JIS A8403「ショベル系掘削機
 用語」4130の「標準荷重」をいう。)に相当する重量以下であって、かつ、1トン未満でなければ当該荷
 のつり上げの作業を行わないこと。
3 玉掛け等
 玉掛け用ワイヤロープを掛け、又は外す作業は、玉掛技能講習を修了した者又は玉掛けの業務に係
 る特別教育を修了した者が行うこと。 また、つり上げた荷との接触等による危険を防止するため、荷の
 振れ止め、荷の位置決めは、荷に 控えロープを取り付ける等の方法により行うこと。
4 車両系建設機械の運転等
 ドラグ・ショベルの旋回速度は移動式クレーンの3〜4倍であり、車両系建設機械で荷をつった状態で
 の旋回においては、つり荷等が労働者に接触する危険性や遠心力による荷の振れが大きくなり、 当
 該車両系建設機械が転倒する危険性が高い。 こうしたことから、荷のつり上げの作業を行うに当たっ
 ては、エンジンの回転速度を低速に調整するとともに、作業速度切換装置を有する車両系建設機械に
 あっては、当該装置を低速に切り換えて作 業を行うこと。
5 点検等
(1) その日の作業を開始する前に、つり上げ用の器具等の異常の有無について点検を行い、異常がな
  いことを確認してから、荷のつり上げの作業を行うこと。
(2) 定期自主検査(年次及び月次)の際には、検査項目につり上げ用の器具の異常の有無を加えて 検
  査を実施するとともに、その記録を保存すること。

第2 土止め支保工用の部材の打ち込み作業等を行う場合の措置

地山の掘削の作業に伴う土止め支保工の組立て又は解体の作業において当該掘削作業に用いた車両
系建設機械(以下「掘削用機械」という。)を用いて土止め支保工用の部材(以下「土止め用部材」 という。)
の打ち込み又は引き抜きの作業を行う場合に、次の措置を講ずるときは、労働安全衛生規 則第164条第
2項第2号の「労働者に危険を及ぼすおそれのないとき」に該等するものとして取り扱って差し支えない。
1 掘削用機械の構造
バケット等の作業装置に次のいずれにも該当するフック等の引き抜き用の金具等(以下「金具等」 という。)
が取り付けられていること。
 (1) 負荷させる荷重に応じた十分な強度を有するものであること。
 (2) 作業装置から外れるおそれのないものであること。
 (3) 掘削作業時に著しい損傷を受けるおそれのない位置に取り付けられていること。
2 使用
 (1) 作業の性質上やむを得ない場合を除き、掘削用機械との接触、土止め用部材の落下若しくは転倒又
  は掘削用機械の転倒による危険が生じるおそれのある箇所に労働者を立ち入らせないこと。
 (2) 掘削用機械の構造上有している安定度、打ち込み能力、引き抜き能力等の範囲内で作業を行うこと。
 (3) 掘削用機械及び金具等に著しい損傷を与えるおそれのある作業を行わないこと。
 (4) 作業の方法、手順等を定め、これらを関係労働者に周知させ、かつ、作業を指揮する者を指名 して、
  その直接の指揮の下に作業を行うこと。
 (5) 一定の合図を定めるとともに、合図を行う者を指名してその者に合図を行わせること。なお、 上記(4)
  の作業を指揮する者を、合図を行う者に指名して差し支えない。
 (6) 引き抜き作業においては、金具等を使用するとともに、金具等と土止め用部材とを確実に連結 すること。
3 点検
その日の作業を開始する前に、金具等の異常の有無について点検を行い、異常のないことを確認してから
作業を行うこと。