Q&A 移動式クレーンの搭乗設備について
【質問】 移動式クレーンで人が乗った籠を吊り上げて作業することは可能でしょうか?
【回答】
クレーン等安全規則第72条により、労働者をつり上げることはできません。
事業者は、移動式クレーンにより、労働者を運搬し、又は労働者をつり上げて作業させては ならない。
ただし、クレーン等安全規則第73条によりやむを得ない場合は専用の搭乗設備を設ければ吊り上げてもよいことになっています。
 事業者は、前条の規定にかかわらず、作業の性質上やむを得ない場合又は安全な作業の遂行上必要な場合は、移動式クレーンにつり具に専用のとう乗設備を設けて当該とう乗設備に労働者を乗せ ることができる。
事業者は、前項のとう乗設備については、墜落による労働者の危険を防止するため次の事項
を行なわ なければならない。
 一 とう乗設備の転位及び脱落を防止する措置を講ずること。
 二 労働者に安全帯等を使用させること。
 三 とう乗設備ととう乗者との総重量の一・三倍に相当する重量に五百キログラムを加えた値が、当該 移動式クレーンの定格
   荷重をこえないこと。
  四 とう乗設備を下降させるときは、動力下降の方法によること。
労働者は、前項の場合において安全帯等の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。
それでは実際に「どのような場合に」「どのような設備で」「どのように作業をしたらよいのか」は昭和46年9月7日の基発第621号に具体的に示されているので参考にしてください。
1 第1項の「作業の性質上やむを得ない場合」とは、次に掲げるような場合をいうこと。
 イ マスト上の電球の取り替えまたは壁面の部分的な塗装、補修、点検のように臨時に小規模かつ短期間の作業を行う
   場合

 ロ 鋼線修理におけるとも部分の外板の塗装又は補修作業、超高煙突またはたて坑の建設における昇降のように代替の
   方法が確立されていない
作業を行う場合

2 第1項の「安全な作業の遂行上必要な場合」とは、たとえばコンテナ荷役のためのスプレッダ(つり具)に搭乗する場合のよう にクレーンを利用することによって、より安全な作業の遂行が期待できる場合をいうものであること。
3 第1項の「専用の搭乗設備」とは、労働者を搭乗させて運搬、又は作業させるための専用の搬器または作業床をいい、クレ
 ーンのジブの先端にヒンジの状態で取り付けられるものおよびワイヤーロープ等により吊り下げられるものであること。

4 ワイヤーロープ等により吊り下げて足場として使用する「専用の搭乗設備」は労働安全規則のつり足場に関する規定(第  
 109条の6第8号〔現行=第574条1項8号〕の規定を除く。)によるものであること。

5 労働者の運搬のみに使用される「専用の搭乗設備」は、次の基準に適合するものとすること。
 イ 構造及び材料に応じた最大積載荷重が定められ、かつ、それが表示されていること。
 ロ つり鋼索またはつり鋼線の安全係数は10以上、つり鎖またはつり鋼帯および支点となる部分の安全係数は5以上である    こと。
 ハ 高さ90cm以上のてすり、中さんおよびはば木がそれぞれ全周にわたって設けられていること。
 ニ 使用する材料は構造上の強度に影響を与えるような損傷、変形または腐食などがないものとすること。
6 第2項の「転倒及び脱落を防止する措置」とは、偏心荷重等による搭乗設備の傾き防止およびつり具へのはずれ止めの取り 付け等をいうこと。
7 第2項第2号の命綱〔現行=安全帯その他の命綱〕は、常に墜落防止に有効であるように着用させ、その状況を点検させるこ と。
8 第2項第3号の規定は、つり荷の自重で下降させる作動方法(自由下降の方法)を禁止したものであること。
9 「動力下降の方法」には、下降を停止した場合に自動的に制動されないものは含まれないこと。
10 クレーンに労働者を搭乗させる場合は、吊り上げ荷重が5トン未満のクレーンの場合であってもクレーン運転士に運転を行 わせるように指導すること。
以上の通り、原則ダメ、ただしやむを得ない場合やより安全な場合に限り、安全な専用の搭乗設備を用いればOKですよということです。不安な場合は最寄の監督署に相談すれば丁寧にアドバイスしてもらえると思います。ご安全に!